筋力トレーニングにおける呼吸法

滋賀県大津市瀬田のトレーニングジム 女性専用フィットネスLBCです。
筋力トレーニングで高重量を扱う際、呼吸法はパフォーマンスと安全性を大きく左右します。
特にスクワットやデッドリフトのような高負荷の基本種目では、バルサルバ法(Valsalva maneuver)が呼吸の基本として広く推奨されています。
一方でコンセントリック局面(筋肉が収縮する局面)で「フーフー」と息を吐くアプローチを推奨する声もありますが、高重量を扱う種目においては非効率的でナンセンスな場合が多いです。
ただしバルサルバ法はメリットが大きい反面、リスクも伴う為に血圧の高い方や高齢者には注意が必要です。
バルサルバ法のメリットとリスクをエビデンスに基づいて解説し、適切な呼吸法の選択について考えた文は以下の通りです。
バルサルバ法とは何か?
バルサルバ法とは息を吸って止め、腹腔内圧を高める呼吸法です。
具体的には動作前に深く息を吸い、腹部を膨らませて体幹を固め、動作中(特にエキセントリックからコンセントリックへの切り替え)に息を保持し、動作完了後に吐き出します。
バルサルバ法のメリット
バルサルバ法が高重量トレーニングで推奨される理由は、科学的根拠に基づく明確なメリットがあるからです。
- 体幹の安定性向上
バルサルバ法は、腹腔内圧を高めることで体幹を強固にします。これにより、脊柱が安定し、高重量を扱う際のフォーム崩れや怪我のリスクが軽減されます。研究によれば、バルサルバ法を用いると、腹腔内圧が最大で20~30kPa増加し、脊柱の安定性が向上することが示されています(Hackett & Chow, 2013)。例えば、スクワットのボトムポジションやデッドリフトの引き始めでは、体幹の安定性が不可欠であり、バルサルバ法がその役割を果たします。 - 筋力発揮の効率化
高重量(1RMの70~80%以上)を扱う際、バルサルバ法は筋力発揮を最大化します。腹圧が高まることで、力の伝達が効率的になり、特にコンセントリック局面でのパフォーマンスが向上します。Zatsiorsky & Kraemer(2006)の研究では、バルサルバ法を用いた場合、最大筋力の発揮が安定し、挙上重量が向上する傾向が報告されています。これは、重量挙げやパワーリフティングの競技者にとって特に重要です。 - フォームの維持
高重量ではフォームが崩れやすく、怪我のリスクが高まります。バルサルバ法は、体幹を固めることで正しい姿勢を維持しやすくなり、特に背中や骨盤の位置を安定させます。例えば、デッドリフトで背中が丸まると腰を痛めるリスクが高まりますが、バルサルバ法により脊柱のニュートラルポジションを保ちやすくなります(Schoenfeld, 2010)。
バルサルバ法のリスク
一方で、バルサルバ法には健康上のリスクも存在し、特に特定の健康状態がある人には注意が必要です。
- 血圧の急上昇
バルサルバ法は、息を止めることで胸腔内圧と血圧を一時的に急上昇させます。Hackett & Chow(2013)の研究では、バルサルバ法を用いた高重量リフティングで、収縮期血圧が一時的に300mmHg以上に達する場合があると報告されています。この急激な血圧上昇は、高血圧や心血管疾患の既往歴がある人にとって、心臓や血管に過度な負担をかけるリスクがあります。そのため、血圧の高い方や高齢者は、医師の指導のもとでトレーニングを行うべきです。 - めまいや失神のリスク
長時間の息止めは、脳への血流を一時的に減少させ、めまいや失神を引き起こす可能性があります。特に、初心者やバルサルバ法に慣れていない人は、息を長く止めすぎることでこのリスクが高まります(American College of Sports Medicine, 2018)。適切なタイミングで息を吐くことが重要です。 - フォーム習得前の適用
初心者がフォームを十分に習得していない段階でバルサルバ法を用いると、誤ったフォームで高重量を扱うリスクが増えます。これにより、腰痛や関節の損傷を引き起こす可能性があるため、まずは低重量でフォームと呼吸を練習することが推奨されます。
「コンセントリックでフーフー」の限界
コンセントリック局面で息を吐く「呼気法」は、低~中重量のトレーニングや持久力系エクササイズ(例:ハイレップのケトルベルスイング)では有効です。
この方法は呼吸をリズミカルに保ち、筋肉への酸素供給を維持するのに役立ちます(American College of Sports Medicine, 2018)。
しかし高重量トレーニングでは以下のような問題があります
- 体幹の安定性低下:コンセントリック局面で息を吐くと腹圧が下がり、体幹の安定性が損なわれます。これにより、フォームが崩れ、怪我のリスクが高まる。
- 筋力発揮の制限:高重量(1RMの80%以上)では、バルサルバ法に比べ、呼気法は筋力発揮が制限され、パフォーマンスが低下する。
- 動作のリズムの乱れ:意識的に息を吐くことに集中すると、動作のリズムや集中力が乱れ、フォームが不安定になる場合がある。
適切な呼吸法の選択
高重量トレーニングではバルサルバ法が体幹の安定性と筋力発揮の点で優れているため、基本的に推奨されます。
ただし以下のようなケースに応じた柔軟な対応が必要です
健康状態
高血圧や心血管疾患のリスクがある人は、医師に相談し、低重量での呼気法やモビリティワークを優先。
初心者
フォームを習得するまでは、低重量でコンセントリック局面で息を吐く練習を行い、徐々にバルサルバ法に移行。
中上級者
バルサルバ法を基本に、1~2秒以内の息止めを意識。長時間の息止めは避け、動作完了後に速やかに吐く。
実践的には動作前に深く息を吸い、腹部を膨らませて腹圧を高めて動作中に息を保持し、トップポジションで吐くのが理想的です。
例えばスクワットなら降下中に吸って保持、立ち上がり後に吐く、といったリズムです。
結論
高重量の筋力トレーニングでは、バルサルバ法が体幹の安定性と筋力発揮を最大化する有効な呼吸法です。
エビデンスに基づけば脊柱の保護やパフォーマンス向上が期待できる一方、血圧の急上昇やめまいのリスクも伴います。
血圧の高い方や高齢者は慎重に取り組むべきですが、健康なトレーニーにとってコンセントリック局面で「フーフー」息を吐くのは非効率的で、フォーム崩れのリスクを高めるだけです。
個々の健康状態やトレーニング経験に応じ、バルサルバ法を正しく取り入れて全身のトータルバランスを意識したトレーニングで安全にパフォーマンスを向上させましょうと言う話です。
滋賀県大津市月輪1丁目3−8 アル・プラザ瀬田 4F 女性専用フィットネスLBC
無料体験随時受付中