フィットネスとトレーニングの本質:手段を神格化せず、目的に応じた選択を

滋賀県大津市瀬田のトレーニングジム 女性専用フィットネスLBCです。
フィットネスやトレーニングの世界ではさまざまな方法論が議論され、時には対立を生むことがあります。
有酸素運動と筋力トレーニング、ピラティスと筋力トレーニング、インナーマッスルとアウターマッスル、体幹トレーニングとマシントレーニング、OKC(オープンキネティックチェーン)とCKC(クローズドキネティックチェーン)、脳機能と筋機能など、これらを明確に分類して二元化し、優劣をつける傾向があります。
しかし、そんな議論は本質的に無意味です。
何事も目的に応じて手段を選択することが重要であり、手段を神格化するのではなく、まずは原理・原則・基本を理解し、その上で必要な知識を基に最適な手段を選ぶ。これがトレーニングの真髄です。
手段の二元化がもたらす問題とその無意味さ
トレーニング方法を「どちらが優れているか」で議論すると、話が複雑化します。
例えば「有酸素運動は筋肉を壊す」と主張する人もいれば、「筋トレだけが正義」と信じる人もいます。
また、ピラティスを「インナーマッスル特化の優れた方法」と神格化し、筋トレを「アウターマッスル偏重の粗雑なもの」と貶す声も聞かれます。
しかし現実の現場では、こうした極端な二元化が逆効果になるケースを多く見かけます。
インナーマッスルとアウターマッスルは相互に連携しており、どちらかを優位に扱う必要はありません。
同様に、体幹トレーニングとマシントレーニングを対立させるのも無意味です。
体幹トレーニングが姿勢の安定性を高める一方、マシントレーニングは安全に負荷をコントロールでき、特に高齢者や初心者には有効です。
さらにOKCとCKCの議論も同様で、OKC(例:レッグエクステンション)は関節の孤立運動を可能にし、リハビリ初期に適しますが、CKC(例:スクワット)は全身の連動性を重視します。
これらを優劣で分けるのではなく、目的に応じて組み合わせるのが原則です。
脳機能と筋機能の二元化も問題です。
「脳機能の低下が痛みの原因」と主張するトレーナーもいますが、筋トレ自体が脳を活性化する手段となり得るため、分けて考える必要はありません。
実際にエリートランナーであっても、目的に応じて柔軟に手段を組み合わせています。世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ選手は、週に複数回のコアトレーニングやレジスタンストレーニングを組み込み、後半の失速を防いでいます(参考)。
また、ノルウェーのインゲブリクトセン兄弟のようなトップアスリートも、ジムでのウエイトトレーニングを欠かさず行っています(参考)。
これらは、単なる「走るだけ」のトレーニングから進化した証拠です。
こうした例から、二元化の無意味さが明らかになります。
マラソンでサブ3を目指す場合の具体例
特にマラソンでサブ3(3時間切り)を目標とするランナーにとって、筋トレはもはや「オプション」ではなく「必須」に近い存在です。
研究によると、レジスタンストレーニングを追加する事でランニングエコノミー(同じ速度で走るためのエネルギー効率)が向上し、後半の失速を防ぐ効果が確認されています。
例えば系統的レビューでは、高負荷の筋トレやプライオメトリクスを組み合わせることで、ランニングエコノミーが有意に改善され、マラソンタイムの短縮につながることが示されています(参考1、参考2)。
サブ3達成には、1kmあたり約4分15秒のペースを維持する必要があります。
このペースで完走する為には単なる有酸素トレーニングだけでなく、下肢の爆発力や体幹の安定性を高める筋トレが有効です。
具体的には:
- 重めのスクワットやレッグプレスでストライドを伸ばす
- 片脚エクササイズ(ランジなど)で左右差を解消
- プライオメトリクスで弾性エネルギーを活用
- 体幹トレーニングで上体のブレを減らす
これらを適切なタイミングで取り入れる事で怪我予防とパフォーマンス向上の両立が可能です。
日本国内のサブ3達成者からも、「筋トレを導入してからタイムが安定した」という声が多く聞かれます。
ここでもピラティスや体幹トレーニングを筋トレと対立させるのではなく、統合的に活用するアプローチが鍵となります。
脳機能と筋トレの意外なつながり
さらに興味深いのは、筋トレが脳機能にも好影響を与える点です。
一部のトレーナーや理学療法士が「肩こりや腰痛、五十肩の原因は小脳の機能低下」と主張するように、小脳は運動の協調性や姿勢制御を司っています。
しかしこれを逆手に取れば、抵抗トレーニングこそが小脳を活性化する有効な手段となります。
研究ではレジスタンストレーニングが脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌を促進し、小脳を含む脳領域の灰白質密度を増加させる効果が報告されています(参考1、参考2)。
特に高齢者やリハビリ場面では、マシンを使ったガイド付きの動きが安全に神経を刺激し、認知機能や姿勢改善に寄与します。
つまり、「筋トレ」と「脳トレ」をわざわざ分けて考える必要はありませんし、すべては「目的に合った身体の動き」として統合可能です。
脳機能と筋機能を二元化して優劣をつける議論は、こうした科学的知見から見て無意味です。
結論:知識を基に柔軟に選択する
トレーニングの原理・原則を理解し、目的に対して手段を選択する、それには科学的エビデンスに基づいた知識が不可欠です。
手段を神格化せず、二元化して優劣をつける無意味さを避け、ツールボックスから最適なものを選ぶ姿勢が長期的な成果を生みます。
マラソンサブ3を目指す方も、肩こり解消を求める方も、まずは基本に立ち返り、自分の現状と目標に合ったアプローチを試してみてください。
柔軟な思考こそが真の進化をもたらすのだと言う話です。
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