VBTトレーニングの活用術:目的に合わせた手段選びと最先端理論の限界を考える

VBTトレーニングの活用術:目的に合わせた手段選びと最先端理論の限界を考える
滋賀県大津市瀬田のトレーニングジム 女性専用フィットネスLBCです。
トレーニングの世界では、さまざまな手法が次々と登場します。
しかし最先端の理論が常に最適解とは限りません、目的に応じて手段を選択する事が持続可能な成果を生む鍵となります。
本記事ではVelocity Based Training(VBT)を題材に、このテーマを探ります。
VBTとはバーベルの移動速度を測定して負荷を調整する手法です。
研究エビデンスを基にVBTの強みと限界を解説し、プライオメトリクスとの比較や筋肥大目的への活用までをまとめます。
VBTトレーニングに興味のある方、筋力向上やボディービルを目指す方はぜひ参考にしてください。
VBTトレーニングの概要とその魅力
VBTトレーニングは伝統的な1RMパーセンテージベースのトレーニング(PBT)と比較して、日々のコンディションをリアルタイムで反映できる点が魅力です。
例えば疲労が溜まった日には速度が低下するため、自動的に負荷を調整できます。
これにより無駄な過負荷を避けながら効果的な刺激を与えられます。
しかしVBTが全ての目的に万能かと言えば、そうではありません。
研究によるとVBTとPBTの筋力向上効果に有意な差はない場合が多く、最先端のツールとして過度に期待するのは誤りです(Orange et al., 2022;Liao et al., 2021)。
目的が筋力向上であればVBTを取り入れる価値はありますが、パワー系競技では他の手段を組み合わせるのが賢明です。
VBTトレーニングのメリットとして、モチベーションの向上や疲労管理のしやすさが挙げられます。
デバイスで速度を数字として確認できるため、競争心が刺激されます。
一方でデメリットは高価なデバイスが必要な点です。
初心者の方は、安価なアプリ連携型から始めることをおすすめします。
VBTの科学的エビデンス:研究例から見る実力
VBTの有効性を裏付ける研究は数多くあります。
例えば2022年のOrange et al.のメタアナリシスでは、VBTと伝統的トレーニングの比較で筋力やパワーの向上に有意差がないと結論づけられています(Orange et al., 2022)。
またLiao et al.(2021)のレビューでも、ジャンプやスプリント性能で同様の結果です(Liao et al., 2021)。
さらにZhang et al.(2022)のメタアナリシスでは、VBT単独で下肢性能が向上します(Zhang et al., 2022)。
個別研究ではDorrell et al.(2020)のRCTでVBT群がベンチプレスやジャンプで優位を示した例もあります(Dorrell et al., 2020)。
しかしメタレベルでは差がなく、ハイブリッドアプローチが推奨されます。
これらのエビデンスからVBTは効果的なツールですが、最先端理論として絶対視せずに目的に合わせて選択すべきです。
速度測定の本質:主観性と客観性のバランス
VBTの核心は速度測定ですが、重い負荷では全力で挙げてもゆっくり動く為に主観的に感じる「遅さ」が課題となります。
しかしデバイスによる客観的な測定(m/s単位)がこれを解決します。
研究では最大意図(maximal intent)を前提に測定することで、神経適応が向上するとされています。
最先端のデバイスに頼りすぎず、目的に合ったフォームを選ぶことが重要です。
測定は主にコンパウンド種目(スクワット、ベンチプレス)で行われ、ストリクトフォームを保ちつつ爆発的に挙上します。
プライオメトリクス要素を取り入れる場合もありますが、VBTの本質はレジスタンストレーニングです。
VBTの歴史:進化の軌跡から学ぶ
VBTの歴史は1960年代のロシアスポーツ科学に遡ります。
Yuri Verkhoshanskyのshock trainingが爆発力重視の基盤となり、1980年代のFred HatfieldのCompensatory Accelerationが最大意図を強調しました。
1990年代以降にLouie SimmonsのWestside BarbellやBryan Mannの研究で現代形が確立され、デバイス普及が進みました。
2020年代では、AI統合や個別最適化がトレンドです。
しかし歴史的に見て、最先端技術が常に優位だったわけではなく、伝統的手法との融合が成功の鍵です。
主要研究論文:最新レビューから洞察を得る
主要論文として、Kolimechkov et al.(2022)のネットワークメタアナリシスでは、低VLのVBTがジャンプ性能で優位とされています(Held et al., 2022)。
またZhang et al.(2022)のメタでは、VBT単独で下肢性能が向上します(Zhang et al., 2022)。
これらのレビューからVBTは有効ですが、目的(例: 爆発力 vs 筋力)に応じてVLを調整すべきです。
最先端論文でもエビデンスの質が中程度のため、過信は禁物です。
プライオメトリクスとの比較:補完関係を活かす
プライオメトリクスはSSCを活用した自重中心のトレーニングで、VBTは負荷付きの速度測定です。
比較研究ではプライオがジャンプやスプリントの加速相で優位ですが、VBTは筋力基盤を強化します(例: Eihara et al., 2022)。
直接比較は少ないものの、ハイブリッドが推奨されます。
目的が爆発力ならプライオ、疲労管理ならVBTを選びましょう。
最先端のVBTだけに頼らず、組み合わせるのが最適です。
VBTを筋肥大目的に活用:ボディービルへの応用
VBTは筋肥大(hypertrophy)にも有効です。
高VL(30-40%以上)設定でメタボリックストレスを高め、ボリュームを増やせば肥大効果が向上します。
Pareja-Blancoらの研究で、機械的緊張が鍵とされています(Pareja-Blanco et al., 2017)。
VBT vs PBTで肥大に差はないものの、日調整が可能で長期的に有利です。
ボディービルでは、0.5-0.75 m/sの速度ゾーンでVL 40%を目指しましょう。
最先端理論としてVBTを導入する際は、伝統的ハイレップとのハイブリッドを検討してください。
まとめ:目的に合った手段を選び、最先端に惑わされない
VBTトレーニングは優れたツールですが、最先端の理論が最適解とは限りません。
研究エビデンスから、目的(筋力、パワー、肥大)に応じて手段を選択し、プライオメトリクスやPBTと組み合わせるのが理想です。
トレーニングの成果を最大化するため、柔軟なアプローチを心がけましょう。
VBTに挑戦する際はまずは小規模から始め、自分の体に合った方法を見つけて行きましょうねと言う話です。

